この数週間、育児と在宅ワークをうまく両立させようとしている親御さんたちとオンライン共有セッションを開催しました。日本在住で、主に小さいお子さんたち(1~9才)がいる十数名の親御さんたちに、新たなワークスケジュールの組み立て方や、コミュニケーション戦術、ホームスクールを習慣化するにあたっての工夫などを共有していただきました。
日本は来月も引き続き休校が決まっています。ご参加いただいた親御さんたちによる考えや学びを共有することで、同じような状況にある皆さんのお役に立てればと思います。
親の仕事の効率化にも繋がる子供の生活習慣づくり
参加者の全員が直面した大きな課題の一つが、子どもの世話と仕事の両立を可能にする、新たな習慣づくりでした。
ホームスクールを習慣化するためのコツ
多くの親御さんたちが、家で学校のカリキュラム通りに教えることに対し、困難を感じていました。ほとんどの学校が宿題を出していますが、親は子供たちにちゃんと勉強するよう、今までにない配慮と厳しさでしつけをしなければなりません。さらに、学校がいつ再開するのか見通しがつかないため、短期的な解決法で良いのか、あるいは長期的な解決法を練るべきなのか、そこに投資するべき熱量が測れないもどかしさを感じているようでした。
多くの人がカーンアカデミーなどの一時的なリソースを利用していますが、緊急事態宣言が延長された今、親御さんたちは長期的かつ持続可能な解決策を迫られています。
- 子供はグループ学習でより伸びることがある グループ学習では、子ども達は自然と相互監視と相互扶助を行います。そのため勉強に特化した環境であれば、子供たちの行動を予測しやすくなります。セッションに参加している親御さんの中には、親達が交代で教えられるように、Zoomで別の子と同じ授業を受けさせたいと考えている人もいました。
- 勉強を中心とした習慣やルールを作る より建設的な学びの場を整えるために、勉強に集中する時間と、勉強をする為の空間を作ることを提案した親御さんもいました。また授業の前は学校と同じように挨拶(起立や礼)を行うなど、ルールを設けるのも有効かもしれないという話も上がりました。
集中して仕事をするための境界線作り
現在、誰もが仕事や生活を両立させるために葛藤しながら日々試行錯誤していますが、さらに子どものスケジュールや生活のルールなどを一から考えるのは至難の業です。いつもに増して家事や育児の負担が増え、仕事に集中する時間を確保できないのが、親御さんにとってストレスになっているということが見えてきました。
特に小さなお子さんがいる家庭では、子供がパパよりママの所に行ってしまう傾向にあるため、在宅ワークに苦労しているママが多くいらっしゃいました。やむを得なく、近くのカフェに行き仕事に集中する時間を確保しているという方もいました。
ここで、提案があった仕事に集中するのに役立ちそうな方法をいくつか紹介します。
- 子供たちが何をすべきなのかわかりやすい様に視覚的に提示をする 自分たちの声だけでなく、画やグラフなど他に提示できるものがあると「ノー」と言いやすいという親御さんが何人かいらっしゃいました。 例えばある親御さんは大きな円グラフを使って、赤色は勉強に集中する時間、緑色は遊びの時間など、一日のスケジュールを可視化しているそうです。5歳の娘が「遊びたい」と言ってきた場合、チャートを差して「これにはなんて書いてあるの?」と質問をして、娘さん自身に何の時間か言ってもらうそうです。また、その親御さんは子供を同僚の様に尊重する心掛けをしているそうで、チャートが緑を指しているときは必ず100%子供と向き合う時間を作っているとのことでした。 別の方は、5歳の息子のためにポイント制度を導入したと言っていました。例えば「静かに勉強する」など、与えられたタスクをこなしポイントを貯めると「ビデオを見る」など楽しいアクティビティーに変換することができる、頑張ったらご褒美を与える方法です。
- ご飯やお昼寝など、子供にとって必要なものを中心にスケジュールを立てる せっかくスケジュールを立てても予定通りに行かないこともありますが、特に小さな子を持つ親御さんにとっては、ご飯やお昼寝の時間帯は比較的固定している為、それに合わせてスケジュールを組むことが鍵となります。例えば、お昼寝の1時間を、毎日仕事の時間として使っているという親御さんもいました。他には、お昼寝を挟んで朝と夕方で子供の世話をパートナーと分担している方もいました。
罪悪感を克服する
パートナーと課題を共有しコミュニケーションを取る
「こんな時だからこそ、いい親にならななくちゃ」と参加者の多くが、このようなプレッシャーを感じていました。
ウェブセッションに参加した女性の多くが、全てをこなすことができないことに「ママの罪悪感」を感じていました。「もっと頑張らなきゃ」という自分に課したプレッシャーが、誰かに家事を頼むことをさらに難しくしています。
収入が不安定な小規模ビジネスやスタートアップで働く親御さんの中には、家計への貢献度が低いことに罪悪感を感じている方もいました。世帯収入を補うために普段家事を多めにこなしている方は、やることが増えてパンク状態の今もパートナーに助け舟を出せず、企業のための準備の時間を作り出すことが困難になっていると言う声もありました。
あるパパは、男性優位のワークカルチャーを持つ日本では、男女間での家事分担がますます不平等になってしまうのではないかと懸念されていました。特に小さな子供を持つ家庭では、授乳や睡眠スケジュールの負担は女性の方が大きい傾向にあります。彼の息子は生後9ヶ月で、夜中に目を覚ましてしまうため、妻がしっかり休めるよう、午前中に子供の世話を受け持つようにしてい流そうです。
学校や一部の保育所が休業中の今、お互いに負担のかかる子供の世話をどのように分担するか、親は共に協力して難しい決断を下さなければなりません。参加者の中の多くの女性が、今まで以上にパートナーの積極的なサポートの必要性を訴えていました。
- やりくりの秘訣は「シフト制にする」もしくは「定期的なプランニングをする」 今の状況を上手く管理できている親は次の二つの方法のうちどちらかを実践していました。 ①子供の世話をシフト制で分担する。例えばママが午前7時〜11時まで、パパは午後1時〜5時など、子供の面倒を見る時間をシフトで分ける方法です。 ②密なコミュニケーションをとり定期的なプランニングを繰り返す。この方法は、仕事の関係で1日の予定が予測しにくい親御さんたちにとって活用されるとうまく行く様です。例えば、ある親御さんは毎朝1日のスケジュールを話し合う時間を設け、お互いに会議で忙しい時も、必ず子供が何かできるように計画を立てていると言っていました。別の方は、週一で次週の予定をお互いに見せ合い、翌週のスケジュール作りをしていると言っていました。
- 自分たちへの過剰な期待を下げる 改めて、今の状況にあった現実的なプランを見直すことによって、肩の荷が降りたと言う親御さんが多くいました。2年間在宅ワークを続けているという参加者の女性は、在宅という仕事環境に適応し、慣れるまでに丸2年かかったと言います。個人差はあっても、それだけ新しい環境に慣れるには時間と工夫が必要だということです。子供に許可するスクリーンタイムにしても、食事の質にしても、一日の生産性も、自分たちが今まとは全く違う状況にあることを受け入れて、自分へのプレッシャーを減らしていくことが重要です。
最後に、こんな困難な状況にありながらも、多くの参加者が大切な家族への感謝の気持ちを口にしていて、その前向きな姿勢にスタッフ一同感動を覚えました。あるパパは、もっと家族との時間が増えたことに感謝していました。また、子供達の鉛筆や箸の持ち方に苦労している様子を見て、それに気づけたことに感謝していました。これをきっかけに彼は親として、パートナーとして、もっとステップアップしたいと熱い思いを語っていました。
一人一人、変わりゆく生活と仕事環境に必死に対応しています。新たな課題にぶつかったり、責任に押しつぶされそうなったり、「何が正解で何が不正解なのか?」そんな疑問を抱えてしまう時もあります。「一人でこの大変な状況に向き合っているわけではない」それを忘れないために、今後もtonariは不安をオープンに共有できる場を設け、お互い助け合いながら、自分達のため、家族のためにより良い選択をできる社会づくりを応援していきます。
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