tonariは組織内での文化やコミュニケーションをどのように変えていけるか
フロンティアコンサルティングと実践した第一次パイロットの振り返りと学び

tonariパイロットプログラム

1月20日、私たちはオフィスデザインのコンサルティング会社、フロンティアコンサルティングにtonariを設置し、第一次調査試験プログラム(以降パイロットプログラム)を開始しました。フロンティアコンサルティングは東京、中国、ベトナム、アメリカを含む国内外13箇所に支社を展開し、合計で235名の社員が雇用されています。

今回の第一次パイロットプログラムでは、フロンティアコンサルティングの東京本部と大阪支社にtonariを設置。それぞれの開かれた作業エリアをつなぎ、社員の誰もが使える環境を作りました。また、ボランティアとして各地から二人ずつ「ファシリテーター」の役割をお願いしました。ファシリテーターはtonariの使い方トレーニングの手伝いや、イベントの計画、サポートを通し、皆がリラックスしてtonariを使うことができる環境を作る役割を担っています。

tonariパイロットプログラムの第一目標は、二つのオフィスをひとつの繋がれた場所につなぐことで「チームとしての一体感」を作ることです。フロンティアコンサルティングの役員のtonariへの希望は以下のとおりです。

  • 大阪支社の社員がマネジメントや新規プロジェクト、最新情報に、東京本部に務める社員と同じレベルでアクセスできること。
  • 企業カルチャーの共有方法の改善。そうすることで一体感とやる気が生まれ、二つの拠点からひとつの目標に向かって同じ情熱で進むことができる。

二ヶ月に渡る調査とインタビュー、様々な立場からのフィードバックの収集を通し、それぞれのtonariの使用用途から以下のような学びを得ることができました。

  1. 等身大で行うボディランゲージは人とのつながりを感じやすくする。
  2. 常時接続だから、より簡単に、頻繁に情報を共有できる。
  3. 思いがけないやりとりから、より素早い意思決定が生まれる。

二つのオフィスの関係を新たに強化・育成することで、tonariがより効率的で深い繋がりをもつ組織作りに貢献できればと思います。

1. 等身大で行うボディランゲージは人とのつながりを感じやすくする

tonariを使った人々から、遠地にいる同僚が「身近にいる感覚を覚えた」という報告がありました。これには、相手を等身大のイメージで見ることができるため、細かなボディランゲージを察しやすいという理由があります。また特筆すべき点として、tonariの豊かな映像・音声情報は、150ミリ秒以下、60フレーム毎秒(Frames Per Second)で伝達されています。これは遠隔ビデオ通信で最高クラスと言えます。またなめらかさと感知できないほどの遅延は、お互いのコミュニケーションの即効性とリアル感を高める役割を果たしています。

「等身大、常時接続、周辺環境の映像共有が、離れた人の存在感をこれほど大きく感じさせるものだとは目から鱗でした。」

フロンティアコンサルティングの社員は、Eメール、会社専用の携帯電話、ビデオ会議用ツールのZoomを、内部連絡のために使用しています。ZoomはVoIPとビデオを提供するサービスで、顔の特徴のみを捉えます。反対にtonariを利用した従業員は、相手の全身を見ることで、離れた相手との身体的な距離感に、かなり大きな違いが生まれると報告しています。

フロンティアコンサルティング大阪支社設計デザイン部次長 小野 哲さんのtonariの印象は「等身大、常時接続、周辺環境の映像共有が、離れた人の存在感をこれほど大きく感じさせるものだとは目から鱗でした。」というものでした。

また同じく大阪支部に務めるデザイナー山本 紀子さんはインタビューで次のように回答しました。「東京の人とZoomミーティング中、Zoomからtonariに移動し、全身が見える事により、距離がかなり短くなった。全身が見えるというのはとても良い!

東京本部の桾沢 亞由さんにとって、tonariは自己紹介をともなうミーティングに適しています。「リアルで、相手が実在するんだって感じる。(tonariを使ってみて)あっちにも世界があって、動いてるんだなってことが伝わる。」

tonariはまた、Zoomなど従来のビデオ電話ツールではなかなか伝わらない、地域ごとに異なる文化の、微妙なニュアンスの違いの理解にも効果を示しました。山本 紀子さんによると「東京の人だとイントネーションの違いによりニュアンスがわからない。怒ってるのかな?など勘違いすることもあった。(東京は)大阪のスタッフに対しても同じように感じているだろう。例えば大阪人の関西弁が、怒っているように聞こえるとか。」

tonariを使う人にとって、このようなニュアンスの違いは、技術的で深い話をするときに、特に明確化します。大阪支社の西村 和也さんは東京本部の新入社員、岡野さんとテレビ会議の最中、電話からtonariに切り替えました。西村さんにとって、岡野さんが何を理解し、何に不明瞭なのかを知るためには、実際に相手のボディランゲージを見ることが望ましかったと言います。「tonariだと緊迫感・表情がより見える。新入社員の岡野さんがどこまで専門用語がわかるのかを理解したかった。」そして西村さん曰く、相手が東京にいたので「会話にZoomを使うこと自体頭に無かった」とのことです。きっと声と表情だけでは完全に伝わらなかったでしょう。

tonariの大きなメリットのひとつは、tonariを介したコミュニケーションは共感を得られやすく、より相手の存在感を感じられるということ。小野さんは続けます。「うまく言葉が出ないが(他のコミュニケーションツールだと)、対象者のまとっている空気感・雰囲気を感じれない。大阪・東京だと、矢野さんと良く話す。tonariでつながるまでは、電話だけとかZoomだった。今は本当に困っている時の雰囲気感が感じられるし、伝わる。どう反応しているのかが感じやすい。他の拠点とはtonariで繋がっていないので、正直ちょっと困っています。」

「本当にひとつのオフィスでつながっている感じがした。」

興味深いことに、会議でtonariを頻繁に使わなかったスタッフも、別支部の社員との関係が強い人も、物理的に離れている社員とのつながりを感じることで、tonariからの恩恵を受けていました。ある東京本部の社員は、深夜遅くまで働いているときに大阪支部の照明がまだ消えていないのをみて「一人じゃないと思えた」と感じました。大阪オフィス部長、矢野 尚子さんも東京本部の毎朝の営業会議をtonariからふと耳にし、似たような「つながり」を感じたと言います。「本当にひとつのオフィスでつながっている感じがした。」

「つながり」を定量的に観測することは困難ですが、上記のようなフィードバックから明らかなのは、tonariを使ったコミュニケーションは、同じ空間にいるような感覚に近いということです。それはtonariを通して、お互いの声、表情、ボディランゲージがリアルに視覚に入ってくるからに他なりません。

2. 常時接続だから、より簡単に、頻繁に情報を共有できる

tonariは常時接続されています。

創業時からそのコンセプトを貫いてきたのは、他人との思いがけないやりとりや、チーム間の自由な情報共有が、実際同じ空間で過ごしている時と似たような形で再現されることに意義を感じているからです。

オフィスを共有していると、お互いがよりつながっていて、日々の生活に自分が溶け込んでいると感じられます。反対に遠地のスタッフと仕事をする場合、ときにバラバラになっていると感じられます。フロンティアコンサルティングの大阪支社は、東京本社で進行中のビジネスの現場から取り残されているように感じていました。本社には情報があふれています。しかし、思いがけないやりとりから生まれる情報の共有は大阪支社まで行き渡りません。人事部とランチをすることもなければ(大阪に人事部はない)、営業と廊下でばったり鉢合わせて新規プロジェクトの噂を耳にすることもありません。雑談から共通の理解が生まれるのに、その機会が不足していました。

tonariを通した会話では話題が次々と入れ替わり、とめどなく新しい情報が交わされます。電話やビデオ会議システムと異なり、tonariには「接続停止」ボタンがなく、決められた時間や議論が終了したあとでも、会話が突然止まることがありません。その代わりに、人々は気軽に雑談を続け、様々な話題を語り合います。

「そうそう、ついでにこれも聞きたかったんだけど」「そういえば…」オンサイト訪問でこのような言い回しをよく耳にしました。人々は会議の後も雑談を続け、別プロジェクトの情報交換をしたり、仕事の忙しさや私生活のことなど、より一般的な話題を取り上げていました。

このような予期せぬやりとりが社員間での情報交換を必然的に増やし、それが会社全体の利益にもつながっています。「tonariによって雑談のレベルで人間関係が構築できるところが面白い。人間関係がフラットになるイメージ。」(大阪支社 西村さん)

3. 思いがけないやりとりから、より素早い意思決定が生まれる

シンガポールを拠点とするコンサルティング会社、Electric8のディレクター、アリ・ベズマン氏は、過去にGoogleのプロダクトマネージャーを務めた経験について、興味深い指摘をしています。本社勤務時に、何週間も連絡を取ろうとしていたディレクターにばったり出会う機会があり、短い会話一つで、行き詰まっていたプロジェクトを再び動かすための行動を起こすことができたといいます。本部以外の場所ではこのような機会は大幅に減少します。アリ氏は、メールで緊急性や優先順位を伝えることの難しさ、忙しいマネージャーと連絡を取ることの難しさ、彼らに電話をかけることの威圧感などを指摘しています。一般的に地方の支社にいると、本社にいる上級管理職者との連絡やアクセスが妨げられます。これは組織が定期的な支社間の移動に高額な出張費を払う理由のひとつになっています。アリ氏が指摘したとおり、より多くの社員が上級管理職にアクセスできるようになれば、意思決定が早くなります。フロンティアコンサルティングでも、東京本部と大阪支社をつなぐことで、両拠点の社員同士と経営陣の交流が深まっているのを確認できました。

「メールでやりとりしていたがたまたま通りかかって秒で話が済んだ。最高。」

tonariでつながった社員たちは必要な時にすぐに声をかけ、簡単な質問をすることができます。彼らは同じ支店を拠点とする同僚たちと同じようなメリットを手に入れることができ、適切なタイミングで声をかけ、小さなお願いすることができます。地方に散らばった社員たちは、このような機会を得ることができず、相手に面倒だと思われたくがないために、電話やEメールでの連絡をためらってしまう可能性があります。山本さんはこのような環境について次のように話します。

「電話だと温度感が伝わらない時がある。『怒ってるから電話してきたのかな』とか、勘ぐってしまうことがある。ちょっとした用事だと電話するほどでもないし、電話自体がハードルになってしまっている。『とりあえず自分の判断で進めよう』と思って進めて、でもそれによってコミュニケーションミスがあって、最初に聞いとけばよかった!と後悔した経験が過去に何度かあった。」

tonariの設置が今までの環境に影響を与えているようです。山本さんの経験では「東京から(tonariで)呼ばれた。データを保管されてるか?みたいな小さい確認。こういうちょっとした確認のほうが価値を感じた。WEB会議でわざわざそのような確認はしないし、tonariがなければ電話くらいしか代替手段がなかった。」

より迅速に遠地の同僚たちを見たり、感じたり、声をかけたりできるため、それが不満を解消し、全体の生産性を高めているようです。東京支社の社員は自身の経験について「メールでやりとりしていたがたまたま通りかかって秒で話が済んだ。最高。」と書き込みました。

またtonariを使って会議をしている人たちが、積極的に別のスタッフを巻き込んで会話をしているケースも見られました。そうすると数分でコンセンサスが得られて、意思決定に達しました。フロンティアコンサルティングの役員であり東京本部のファシリテーターの稲田 晋司さんによると「1:1で意思決定が行われるパターンはあまりなく、東京、大阪間で進む会話の途中に多くの関係者を途中で引っ張ってきてタスクを完了したり、すぐ確認して進めることができる点がtonariの効果として大きいと感じた。」

tonariが組織を変えるためには何が必要なのか

tonariの技術はリモートオフィスで働く人々の仕事上の関係を強化するためにデザインされていますが、企業文化のより広範囲な変化は、最終的には実際にそこで働く人々によって生み出されます。「これまで関係の薄い人同士の繋がりを強化したいのであれば、一体感を醸成しなければならない。企業側の文化やマインドも変化していかねばならない。」

パイロットプログラムを開始して2ヶ月目には、横のつながりがある社員間でtonariを定期的に、熱心に使用していることがわかりました。反対に個人的なネットワークが限られている人や、交流する理由がない人は変わらず内気なままであったり、tonariを使う自信がないようでした。それも当然です。バスのなかで見ず知らずの二人が隣同士になっても、お互いに話をすることはほぼないでしょう。

1990年にロバート・E・クラウトとベル・コミュニケーション・ラボが似た実験を行いました。研究者たちは同じビルの別の階にある二つの共通エリアの間にVideoWindowと呼ばれるシステムを設置。彼らは1日24時間、週7日、3ヶ月それをつけっぱなしにし、インフォーマルな交流を促しているかどうか測定を試みました。

「VideoWindowシステムは、離れた場所でのインフォーマルな交流をサポートすることができますが、その使用には社会的な側面にまで注意を払う必要があります。たとえば、一緒に仕事をする機会のある2つの研究機関のカフェテリアをつなげたとします。利用者同士がすでに顔見知りです。しかし他の状況では、見ず知らずの人が適切な話し相手と出会って会話を始める確率は低いでしょう。

VideoWindowが物理的なスペースを拡張し、交流できる人の絶対数を増やすことができても、人々が仕事する社会環境インフォーマルな会話が行われる社会環境を拡張することにはなりません。」

tonariの活用を促進し、組織的な壁を取り除くため、ファシリテーターにご協力をいただきました。大阪では矢野さんと西村さん、東京では稲田さん、桾沢さんがファシリテーターを務めています。彼らのようなボランティアの方々は、tonariを快適に使っていただく機会作りや、その普及を加速させる重要な役割を担っています。ファシリテーターは自身の地位や才能、人脈、在職期間などを活かし、毎週の「サクのみ」やテーマのあるランチ会など、定期イベントを企画・開催。tonariの利用率を高めました。

ファシリテーターのご協力に、大変感謝しています。彼らのポジティブなエネルギーがさらに社内に広がり、より多くの組織のメンバーが率先して、経験の浅い人、内部のつながりが薄い人、社会的に不安を感じている人たちと、知識やネットワークを共有することを、これからも応援していきたいと思います。

結論

パイロットプログラムを開始して二ヶ月で集取した定性的フィードバックによると、tonariの思いがけず生まれる豊かなコミュニケーションによって、遠く離れたチームと強いつながりが感じられたこと、情報共有の改善、意思決定を迅速に行えるようになることが示されました。

また今後は、今回のパイロットプログラムを通して収集した定性的なデータを、より定量的に解釈する調査手法取り込みレポートを作成する予定です。

例えば、tonariを導入後、拠点が離れているチームはどのくらいやり取りが増えたのか、ファシリテーターの努力によって支社間で何人が知り合えたのか、交流の数、頻度、パターンをより体系的に記録する方法があれば、定性的な「親近感」を定量的なデータで検証することができると考えています。

稲田さんは、実際の試練は、組織がtonariのような仕組みを意識しながらその構造を変えていくことだと指摘します。例えば、東京に営業の拠点を置いて、福岡や札幌など賃料の安い地域にデザインチームを設置することで、コミュニケーションの質や優れたチームワークを損なうことなく、コストを大幅に削減することができます。

tonariの活用が増えれば、半年間のパイロットプログラムを超えた範囲で、近い将来このような構造改革が行えるかもしれません。パイロットプログラムの残り4ヶ月間、フロンティアコンサルティングがtonariにどのように適応し、変化していくか、引き続き見守っていきたいと思います。

Special Thanks

献身的で素晴らしいファシリテーターチームの皆さんと一緒に仕事ができることを、とても幸運に感じています。いつも私たちのために時間を割いてくださり、調査のお手伝いや、有益なフィードバックを提供してくださった稲田 晋司さん、矢野 尚子さん、西村 和也さん、桾沢 亞由さんに感謝します。また、詳細なアンケートの回答やインタビューにご協力いただいた山本 紀子さん、小野 哲氏さん、廣瀬 直記さんにも感謝を申し上げます。最後に、フロンティアコンサルティング大阪支社、東京本部の皆さま。tonariを皆さまの空間に迎えていただき、アンケートやイベントへのご協力、そして皆さまのご意見を元にした機能の改善を、根気強くお待ちいただき、本当にありがとうございます。

最後に、Aya Osuga Andrews、Joy Ding、手島 智さん、そして永浜 静佳さん、才能ある編集者の方々と翻訳家の皆さんへ。世界中からこのレポートの英語・日本語での完成のために手を貸していただき、本当にありがとうございます。この場を借りて感謝の意を伝えたいと思います。

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