今こそリモートワークの職場基準を考え直す時

リモートおよび分散型ワーカーをサポートするための新しいインフラとポリシーが必要な理由

フレキシブルな職場を求めるフルタイム従業員が増え、組織がその利点を意識し利用するようになるにつれ、リモートワークや分散ワークといった働き方をする人が世界中で増えています。2018年のBufferによる調査「State of Remote Work(リモートワークの現状)」によると、リモートワークを採用している組織の39%が従業員25名以下の組織でした。これは小規模ビジネスを始動する上で、組織文化にリモートワークを取り入れることが一般的になっていると読み取ることもできます。企業側から考えますと、これは当然のことでしょう。分散ワークを取り入れることによって会社は職場にかかるコストを33%削減し、より豊富な人材にアクセスしそこから従業員を雇用することができるのですから。

しかしリモートワーク、フレキシブルワークが普及しつつある今こそ、組織は個々の従業員や分散チームを支えるのに必要な組織のポリシーとインフラストラクチャーについてもう一度真剣に考えてみる必要があります。リモートワーク、分散ワークに関し明確に定義されたプロトコル(健康的なワークライフバランスを推進するしっかりとした方策を含む)を構築し、集中できる空間と安定したインターネット環境を確保し、チームメンバーが地理的・組織的境界を越えてカジュアルに交流できる機会を増やすなど、あらゆる面からの取り組みが必要です。

リモートワーク/分散ワークに関するプロトコル

多くの組織がフリーランサーや非正規雇用者、派遣社員を採用していますが、その過半数(57%)はリモートワークに関するポリシーを定めていません。リモートワークに関するポリシーは、リモートワークを実際に機能させるためのガイドラインです。内部コミュニケーション(例えばそのために用いるツール、返答するまでの時間、ミーティングの頻度など)、何をもってタスクやプロジェクトの「完了」とみなすのか、といった重要な課題に関して求められる期待水準を調整し定めるものです。従来の労務規定がコア業務時間、服装規定、従業員評価などを規定しているのと同様に、分散チームやリモートワークスタッフにもチームとして機能し結果を出すための一連のルールやガイドラインが必要です。

さらに、リモートワーク・分散ワークのスタッフの仕事にも、明示的に休憩時間と休日を組み込むべきです。このような働き方をする人はフレキシブルに働けるのだから仕事を離れている時間は少なくてもよいのでは、と考える人もいるでしょう。しかしもう一度考えてみましょう。

  • 2017年のカーディフ大学による研究によると、仕事後くつろいでリラックスすることが難しいと回答した人はリモートワーカーで44%、決まった職場で働く人で38%でした。(出典:People Management
  • CIPDによる2018年の調査によると、リモートワークをしていることでプライベートの時間にも気持ちを切り替えられないと答えた人は3分の1(32%)にのぼっています。(出典:CIPD
  • 回答者の5分の1近く(18%)が、職場と常時接続しているのは監視されているような気分だと答えています。(出典:CIFR
  • さらに驚くべきことに、リモートワーカーの55%が年に15日未満の休暇しか取っていませんでした。回答選択肢の中で最も短い0~5日が通常の休暇日数であると答えた人も16%いました。(出典:Buffer

カーディフ大学の研究を率いたアラン・フェルステッド教授はこう述べています。

「リモートワーカーは、家でもちゃんと仕事をしていると同僚に証明するために過剰な努力をしがちです。自宅あるいはオフィスを離れた場所で仕事をさせてもらっている代わりに、余分な仕事も喜んでやる、信頼できるスタッフであるということを雇用者に証明したいとも思っています」

(出典:People Management

このように「スイッチを切る」ことができない状態は最終的には不満の増大と定着率の低さにつながってしまいます。ですからリモートワークや分散ワークを行うスタッフを抱える雇用者は、彼らの燃えつきを防ぐため適正なワークライフバランス実現をより意識して促進しなければならないのです。

物理的インフラ:ネット接続、ワークスペース、テクノロジーデバイス

安定したインターネット環境にアクセスできること、決まったワークスペースがあること、職務に必要なパソコンやデバイスを持っていることは現代のオフィスワーカーにとって必須条件です。従来これらの条件は職場にいることによってカバーされてきたわけですが、職場に集まって働くことを選択しないチームの場合、このような基本的機能の確保は主に自己負担となります。

Bufferによると、会社がインターネット料金(アメリカの平均で月額60ドル)を負担しないと答えたのは回答者の78%、会社がコワーキングスペース料金(アメリカの平均で月額195ドル)を負担しないと答えたのは回答者の76%でした。従業員の生産性が高まることとコストを削減できることを主な理由として、BYOD(私的デバイスの活用)がますます普及してきていることも追い打ちをかけています。

フレキシブルワーク、リモートワークを利用しコストを従業員に肩代わりさせているのではないかと疑ってしまうような組織もありますが、先見の明のある組織ならこのようなコスト節約が従業員にとって実際どんなに重荷になっているかと自問すべきではないでしょうか。リモートワークスタッフが増えその影響力も増している現在、分散チームやリモートワーカーのために社内従業員と同様の基本的インフラ(職場のスペース、インターネット・携帯電話接続、パソコン等のデバイスなど)をまとめて調達しその費用を負担するのは当たり前の行為と言えます。

孤独への対処、カジュアルなコミュニケーションの促進

物理的空間としての職場は、従業員が集い、交流し、協力し、偶然の出会いが生まれる場となります。スティーブ・ジョブズ氏が古い缶詰工場内にPixarのオフィスをデザインした時、建物の中に郵便ポスト、カフェ、ギフトショップ、そしてバスルームに至るまで、従業員が絶えず回遊するために必要なもの全てを詰め込んだことは有名です。

ジョブズ氏は2001年にこう語っています。

「私たちは皆が集まらざるを得ないようなやり方を見つけ、人と人とが偶然に出会い交流する機会をたくさん作りたかったのです」。

『レミーのおいしいレストラン』などの監督ブラッド・バード氏は後にMcKinsey Quarterlyに語っています。

「初め私たちはオフィスの真ん中にバスルームがあることに腹を立てました。でも (スティーブには)人と人が出会うとき、視線を交わすときにこそ何かが起こるということがわかっていたのです」

(出典:The Independent

ジョブズの目の付け所は秀逸でした。従業員分析ソフトウェア会社HumanyzeのCEOベン・ウェーバー博士はこう語っています「組織のツールとして物理的空間ほど重要なものは他にありません。このことを認識しない会社は今につぶれます」

リモートワーカーも同様に感じています。リモートワークの否定的側面として第一に孤独(21%)とコミュニケーション/共同作業に関する問題(21%)が挙げられています。次いで家にいると集中できないこと(16%)、モティベーション維持の難しさ(14%)、時差による問題(13%)、安定したWi-Fi環境を見つけることの難しさ(8%)が挙がっています。(引用:Buffer

分散ワークに従事しているチームやリモートワーカーがこういった孤独感を克服し、本来同じ職場で働くことでしか得られなかった偶然の出会いやつながりを享受することは可能でしょうか?リモートワークのための次世代製品・テクノロジーは、分散チームのメンバーにバーチャルで気楽なおしゃべりの場を提供するだけでなく、カジュアルなコミュニケーション、自然発生的協力関係、人間関係構築などに関して足りない部分を埋めていくものでなければなりません。

結論

リモートワークによってフレキシブルで自律的な働き方ができるなら、ある程度の追加コストを負担することはやむを得ないと考えるチームや従業員もいるでしょう。しかしリモートワークによる便益を提供してくれる雇用者が増え、フレキシブルに働くことや分散チームで働くことが一般的になってきている今、先を見越して必要なインフラに投資する組織こそが最終的に一番働きやすい企業になるでしょう。組織は将来の収益アップを図るためにも現行のポリシーやインフラを見直し、リモートワーク、分散ワークを支え強化していく必要があります。

tonariは最先端テクノロジーとデザインを通してカジュアルなコミュニケーションに関わる課題の解決に取り組んでいます。現在のツールでは制約が大きくまた機能が不十分すぎて対処が難しい分野ではあるのですが、リモートで繋がったスペースを作り、そこで信頼関係と表現豊かな協調関係の構築を図っています。そして私たちのソリューションをだれでも利用できるものにし、どこでも暮らし働ける機会をみんなのものにしようとしています。

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