なぜ、より多くのチームがリモートワークを選択しないのだろうか?

2018年。リモートワーク・フレキシブルワークを支援するツールが数多く登場し、スタートアップや個人事業を始める人も増えてきました。

2018年。リモートワーク・フレキシブルワークを支援するツールが数多く登場し、スタートアップや個人事業を始める人も増えてきました。先進国の就労者人口が減少して行く中で、企業間でフレキシブルワークを導入する必要性が年々増しています。しかし、財経新聞の調査によると日本国内のリモートワーク導入率は平均して11.5%であり、アメリカの50%を大幅に下回っています。さらに300人に満たない中小企業では導入が約3−6%に留まっていることが全体の引き下げ要因になっています。どうしてこのようなことになっているのでしょうか。

ここ数週間にかけて、数多くの中小規模(2–50名)のチームをインタビューしてきました。コラボレーションツール市場の理解を深めつつ、リモートワークの賛否両論やリアルな体験について話を伺いました。

リモートワーク・フレキシブルワークへの意向や興味はあるものの、実際今の段階だと、後ろ向きな意見を持つ方やチームが多かったことに驚きました。その理由を大きく分けると、⑴組織プロセスの確立の難しさ、⑵従業員が仕事をしている様子を確認できない・信頼を築きにくい、⑶今のツールは創造性が求められる作業を十分にサポートしきれていない、の3つのポイントに集中していることがわかりました。

まずは「組織プロセス」を詳しく見てみましょう。

リモートで働くためには、日常的に会議の内容や決議されたプロセスの記録→ 共有→ 情報の理解→ 情報の集約という多くのステップが必要となります。起業したばかりの忙しいチームほど全部カバーしきれず、次第に従業員の間で内部プロセスの理解にギャップが生じて、いずれ組織がパンクしてしまいます。

ケアファインダー取締役社長のモス恵氏は、まさにこれを体験しました。

最初の頃は夫と数名のアルバイトで「かなりフレキシブル」(借りているシェアオフィスで働く時間・曜日がバラバラ)に事業を運営していましたが、チームが7名に拡大した途端コミュニケーションが破綻してしまいました。

「私たちはまだ若いスタートアップだからいろいろなプロセスが確立していなくて、ケースバイケースで変わっていくことが日常なんです。ビジネスのやり方も色々見ながら変えているし、変更した内容をどこまで見ているのか、わかっているのか。ついていけていない状態でリモートワークをされると一番大変です。プロセスや決まったルーティーンが出来てからであれば、リモートは可能なのかもしれません。

スタートアップはカルチャーや内部プロセス、共通のナレッジベースを一から作る必要があり、それはチームが同じ場所にいないと難しいが、土台さえできればリモートが可能になる、という考えが見えてきます。タイミングの問題なのかもしれません。しかしこれはまた、チームが拡大し新しいメンバーが加わる成長期が続く限り、一人ひとりが組織のプロセスを完全に理解できるよう、同じ時間に同じ場所で過ごす必要があることを意味します。つまり創業者はリモートワークを実践するタイミングがなかなか見えないように思えます。

「信頼」について

従来の職場文化は、現場を監督するマネージャーに重点を置いてきました。リモートワークは自律的かつ自己管理的なワークスタイルなので、従業員を常に監視・監督する必要性はあまりないのです。

Detouur 創業者の石川 光氏はリモートワークについて、このように語っています。

「リモートワークをうまくできる人はいるけれど、実際できない人の方が多いと思います。ちゃんと働いているかどうか信頼できるかわからないし、カルチャーとか仕事に対する論理感が合わないと本当に難しい。全てがルーズになりすぎてしまうリスクもあります。」

日本企業はマネージャーによる監督型の働き方に頼って成長してきたため、このようなワークスタイルしか経験したことのない人材はリモートワークにあまり適していない、という仮説が見えてきます。しかし、優良な人材を採用し続けたい企業ほど、リモートワークのトレンドにうまく対応する方法を学ぶ必要があることは事実です。

十分なツールが(まだ)ない

リモートワークをサポートするツールは市場に溢れているように思えますが、特定のビジネスにしか適していない、と言えるかもしれません。

グローバルなデザインコンサルティング会社であるIDEOの意見を聞いてみました。同社は非常に柔軟なワークカルチャーを持っていますが、デザインディレクターのグレッグ氏は次のように述べています。

グレッグとIDEO東京オフィスにて

「単なるコミュニケーションだと同じ物理的空間にいる必要性は全くないけれど、理解・シェアには重要だと思う。クリエイティブな発想を売りにしているので、インスピレーションを得たり、シェアするためには「プレゼンス」がマストです。IDEOのプロジェクトはチームが一緒に議論したり、1時間ごとに仕事内容が変わったりするので、リモートで操作することは非常にハードルが高い。」

もちろん、社内で利用しているコラボレーションツールはいくつかありますが、グレッグ曰く、「同じ場所でチームと一緒にツールを使えば2倍の仕事量を2倍早く終えることができる」とのことです。

クリエイティブなデザインプロセスにはシェア、インスピレーション、そして議論が欠かせず、既存のツールはこのような業務をサポートしきれていないことが見えてきました。

結論

組織がリモートワークを選択しない・できない理由は ⑴内部プロセスが不足している、⑵遠隔地から信頼を築く難しさ、⑶クリエイティブなデザインプロセスは同じ場所で同じ空気を吸うことで成り立つ、の3つのポイントにあることがわかりました。

上記のような組織の悩みに対して、tonariは包括的なプラットフォームやツールを開発することで離れたチームや場所を繋げ、ストレスのないコミュニケーションを実現しようとしています。これは単なる「コミュニケーション」(情報を右から左へと流す)というよりも、いわゆる「その場の空気」を伝えることで、複雑なコミュニケーションやコラボレーションを支援したり、チーム内の信頼の構築・維持の一助になることを目指しています。

インタビューの中で印象的な例えを聞きました。通訳者を挟んで相手と会話をしていることを想像してみてください。お互いのニュアンスが伝わらないことが多く、さらに、同じことを伝えるのに時間が倍かかっています。非常にやり辛く、相手に気持ちがなかなか伝わらないので、フラストレーションが溜まりがちな状況です。これが、リモートワークの現状です。しかし、同時通訳になった途端かなり改善されますし、さらに共通言語であれば自然な会話に近づきます。

tonariは「最高な通訳者」の役割を果たすことを目指しています。ニュアンスや「空気」の重要性を理解し、それを離れた相手に上手く伝えて、さらに同時通訳で伝えることでより自然なコミュニケーションを実現したいと考えています。組織や社会のカルチャーを変えるのは一朝一夕にはできないにしても、より良いツールを開発することで、もっと円滑なコミュニケーションとコラボレーションが生まれるフレームワークを提供することはできます。

一方で、既存のツールを活用してリモートワークを取り入れている組織も存在します。彼らは完全にリモートで働きながら、マイルストーンを予定通りに達成し、さらに個人に合ったワークライフバランスを追求しています。次の投稿ではリモートワークの成功事例をいくつか紹介して、成功の秘訣を探っていきます。

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