社会福祉での実証実験レポート|tonari lab

tonari labでの実験で分かったこと:「会いたいのに会えない距離」を縮める4つの要素

こんにちは、tonari のZuccaこと永濱静佳です! 🇯🇵🇮🇹🇿🇦

日本人ですが、 イタリアと南アフリカで育ちました。同ように、tonari チームの半数以上が海外出身です。そのため、コロナの影響で長い間、家族と会えていないメンバーもいます。会いたいのに会えない、そんな想いを抱えながら我慢し過ごした人たちが、世界中に大勢いるかと思います。また、コロナ前から足の不自由な方や、アクセス困難な地域に住む高齢者など、自由に会ったり同じ様に仕事や教育の機会が持てない方がたくさんいました。

だからこそ創業時から、距離を超え、大切な人との繋がりをより身近に感じられる社会を実現することをソーシャルベンチャー tonari のミッションとして来ました。2017年に2つの離れた空間を等身大で自然につなぐ技術を開発し、2021年9月に、コミュニティ、家族、教育、障害者福祉の分野で新たな可能性を探るために tonari lab を立ち上げました。

このレポートでは、今年の9月〜12月にかけて代々木八幡と神奈川県の葉山、およそ60kmの距離を結んだ会場で行った実証実験の調査結果をまとめました。

6つの実験について

今回行った実験は、以下の6つです。

  • 料理クラス - 本場の先生から教わるメキシコ料理 [9月10日]
  • 朝のヨガクラス - 朝食付きの体験 [10月20日]
  • 手話の課外授業 - Silent Voice デフアカデミー [11月5日]
  • 腹話術で伝える被爆証言 - Peace Boat おりづるプロジェクト [12月6日]
  • 親子の電子工学 - ELワイヤーでネオンサイン制作 [12月11日]
  • ドキュメンタリー鑑賞 - プロデューサーによる制作秘話のトーク付き [12月13日]

公募を通し、集まった多くのアイデアの中から、多様性と研究テーマへの適合性を考慮し、6つの実証実験を選びました。選んだそれぞれの実験を、研究テーマに合わせ設計し、参加者や共同主催者を募集、tonari の設置場所を含む会場のレイアウトや使用するツールを工夫しました。また、実験を記録し検証するための撮影を行い、実験後には参加者にアンケートやインタビューも行いました。

ここからは、各実験において、tonari が距離を縮めるのに役立った4つの点に焦点を当ててまとめていきます。

  • ポイント1:ユニバーサルデザインのため誰もが簡単に使える
  • ポイント2:体験学習や遠隔授業に最適
  • ポイント3:同じ空間にいるように一緒に過ごすことができる
  • ポイント4:実施内容に応じレイアウト変更をすると一体感が生まれる

tonari が距離を縮める 4つのポイント

ポイント1:ユニバーサルデザイン

障害の有無や年齢にかかわらず、簡単に使えること

今回行った6つの実証実験では、被爆者証言を行って頂いた80歳代の小谷さんをはじめとしたご年配の方から、10歳未満の子供まで、幅広い年齢層の方々に tonari を利用して頂きました。tonari の使い方を説明をせずに実験を行ったにも関わらず、「こんにちは!」「はじめまして」と tonari という仕組みに囚われず、自然に使いこなしている場面が見れました。

ろう・難聴児の教育事業を展開するNPO法人Silent Voiceと共同で開催したワークショップでは、手話通訳者から『手話は、身振りや顔の表情など身体全体を使って、意思や考えを相手に伝える必要があるので、tonari は手話を教えたり学んだりするのに最適な環境』だと話してくれました。他のビデオ会議システムの欠点である可視範囲の狭さを tonari は補い、通信遅延が起きない設計は、相手への思いやり、温もりとなり伝わり、どなたにも快適で幸せな環境を作り上げることができると実感しました。

また、小さな子どもは長時間集中することが難しいものです。特にオンラインだと一時間もの間パソコンの前に座っているのが苦痛だと感じる子が多い中、tonari は教室での授業と似ているため、少し動き回りながらも最後まで授業に参加することができました。

また、Peace Boat「おりづるプロジェクト」と共同で、被爆された小谷孝子さんの証言会を行いました。被爆者の平均年齢は84歳となり、遠方へ移動することが難しくなってきた中、tonari を使い貴重な「当事者の“生の声”」を届けて頂くイベントを行えました。対面でなければ伝わりにくい原爆の恐ろしさを、物理的な距離を超え国内外多くの方へ伝えられる環境であると、参加者みなさんからコメントを頂きました。

ポイント2:体験学習や遠隔授業に最適

参加体験型の学習や教育にこそ強みを発揮する

tonari では、オンライン会議システムで常時起こっている映像・音声の遅延がありません。遅延なく映し出される映像(特に動きのある映像)や音声は、オンライン独特のストレスを無くし、授業に集中できる様になります。また話しかけるタイミングを伺うことなく、対面と同様に自然なタイミングで先生に質問をしたり生徒へアドバイスを行うことができます。

親子の電子工学ワークショップでは、ドリルを使ったり、ワイヤーを通したり、火で炙ったりと、敢えて子供には複雑な作業も伴うELワイヤーのネオンサイン作りをテーマにし、ストレスなく教えられるのかという実験を行いました。当日はホワイトボードを使ったり、手元の映像をシェアモニターに映し出して細かい作業を見せたり、ステップを一つ一つ確認しながらそれぞれのペースでオリジナルデザインのネオンを完成させました。

料理クラスでも先生が生徒の手元を見ながら、焼き具合のチェックや細かい作業の確認ができたので、先生・生徒ともに満足度の高い料理教室となりました。tonari は、体験学習や遠隔授業に最適な環境をつくることができます。

ポイント3:同じ空間にいるように一緒に過ごせる

まるで一緒にいるかのような自然な距離感で心地良くイベントが開催された

ヨガクラスの参加者からは「お互いの呼吸の音も聞こえるような落ち着いた雰囲気でのクラスと、一緒に和気あいあいと作って飲んだスムージーが対照的で面白かった」「共通の体験と雰囲気が味わえ、とても60km離れているとは思えませんでした!」など自然な距離感に関するコメントが多く寄せられました。

他のオンライン会議システムは離れた人と人とを繋いでいるのに対し、tonari は離れた空間と空間を繋ぎ、同じ部屋にいる様な距離感、親密度で一緒に過ごせるよう工夫をしています。

壁一面がスクリーンなので凝視せずとも、相手側の部屋全体が見渡せます。音声も、遠近の違いを音で感じられる細やかな設計が施されています。実際にその場で目にし音を聞いているのと同様に、脳が情報を受け取れる様、設計段階から工夫がなされています。カメラや複数あるマイクも肉眼では確認ができない様にデザインにすることで、利用者にデバイスを使用しているという感覚を与えないようにしています。

また今回、一緒にいるかのような感覚を味わえる様に五感全部に訴えかける様なイベントを行いました。築地市場に密着したドキュメンタリー映画を見ながら、その裏話を制作プロデューサーから話して貰い、一緒に炊き立てのご飯とお刺身を食べる。本来であれば同じ場所にいないと楽しめないイベントです。

2箇所で同時に映画を見る環境づくりは、技術的な部分で少しチャレンジングでしたが、Q&Aは40分ほど続き、参加者からは「一緒の飲み物や食べ物を味わうと一体感を感じる」「皆んなで寝転びながらリラックスした雰囲気でのイベントを楽しめた」など色々な意見がありました。

ポイント4:目的に応じレイアウトが自由自在

実施内容に応じ柔軟にレイアウト変更することで、より一体感が生まれる

ここまで説明してきた様に、tonari は空間と空間を繋ぎ、同じ部屋にいるかの様な体験を作り上げます。より自然に一体感を持たせるためには、両方の空間のレイアウトやツールを考慮することが大切です。例えば、tonari から等距離に家具をミラーリングさせると、参加者が空間把握に脳を使わずとも自然と情報吸収することができます。

V字

tonari のスクリーンを起点にしたV字型レイアウトは、プレゼンターが1人の時に最適なレイアウトです。

被爆証言ではメインスピーカーの小谷さんを参加者がV字に囲み、両側の参加者もスピーカーもお互いの顔が見えるように工夫をしました。

半円

tonari のスクリーン越しに半円を描くレイアウトは、それぞれが同じ立ち位置で安心し一緒に話ができるので、ディスカッションや一体感を感じたい時に有効なレイアウトです。

例えば、ヨガクラスでは、tonari スクリーンを中心に扇状にレイアウトすることで、2つの離れた空間で行っていることを忘れ、同じ空間で実際にクラスを受けている感覚を作り上げることができました。

ワークショップ型

テーブルを画面の中心に配置することで、同じテーブルで作業している様に感じられるレイアウトです。

メキシコ料理教室ではtonariスクリーンから見て、2つの空間が対象的になるよう作業テーブルを配置することで、『同じ部屋にいるような感覚でワイワイ楽しめた』という感想をたくさん頂きました。

tonari lab のこれから

以上、今年9月から12月にかけて行ってきた6つの実証実験の調査結果によって、tonari が、コミュニティ、家族、教育、障害者福祉」などの社会福祉的な分野で、「仕事」の枠を超えて役立てると確信しました。将来的には、tonari labを海外にも広げ、より遠くの空間同士を一つに繋げる活動をしていきたいと考えています。

また、国内で tonari を活用した実証実験を一緒に行ってくれるパートナーさんや企画を引き続き募集していますので、オンラインフォームからご応募ください。代々木と葉山間の tonari lab は2022年3月まで運営されます。

最後に、私達の実証実験に参加頂いた皆さん、一緒にワークショップを作り上げてくださった共同主催者の皆さんに、改めてお礼を申し上げさせて頂きます!

tonari lab ギャラリー

もっと実証実験の詳細やイベント動画を見たい方は、ぜひ tonari lab のギャラリーページをご覧ください🧑‍🔬 一つ一つの実験の仮説や分析なども乗っております!

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